事務所名の「つじのか」が商標登録されました!
先日登録証が届き、ひとまず商標登録の手続は終了です。
ですが、これがゴールではありません。
商標権でビジネスを適切にフォローするために、管理と継続的な見直しが必要です。
そこで、今回は商標登録後の管理と注意点をお伝えします。また、よく商標についているマークについても解説します。
更新期限の管理
商標権は更新することができ、更新料を払い続ければ半永久的に存続させることができます。
逆にいえば、更新料を払わなければ商標権は消滅します。
将来、登録した商標を使用しているかどうかはわかりませんが、まずは使用を続けていると想定して、期限を管理しましょう。
期限日
- 10年分の登録料を納付した場合→登録日から10年後
- 登録料を分納(5年分納付)した場合→登録日から5年後
「つじのか」の場合は、登録日が「2022年8月8日」で10年分の登録料を納付していますので、更新登録の期限日は10年後の「2032年8月8日」になります。
登録証に同封されている水色の「商標権設定登録通知書」の右上に「存続期間更新登録期限日」が記載されていますので、そこでも期限日を確認することができます。
更新期限の管理の方法として、自分でカレンダーなどに記載する方法や、別途ソフトやアプリで管理する方法が考えられます。
また、特許庁は、令和2年4月から商標の更新期限切れを予防するために、メールを利用して商標更新期限をお知らせするサービスを開始しましたので、自分での管理とともにこちらも利用するのがよいのではないかと思います。
更新の手続
更新の手続は、下記の書類を提出して、更新登録料または後期分の登録料を納付するだけです。
- 10年分の登録料を納付した場合→商標権存続期間更新登録申請書
- 登録料を分納(5年分納付)した場合→商標登録料納付書
更新登録申請、分納の特許庁の料金はこちらで確認することができます。 産業財産権関係料金一覧 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp) |
更新の手続は期限日の6カ月前から行うことができます。
なお、出願のときのような審査はありません。
期限内に手続できなかったときは
万が一、期限日までにに手続ができなかったときは、期限日の経過後6カ月以内であれば、倍額の料金を納付することにより、更新することができます。
商標に付されるマーク-®、TM、SM
ところで、商標の右上や右下に小さく付されている「®」マークや「TM」マーク、いったい何のためについているんでしょうか?
「®」マーク
「®」は、「Registrated trademark(登録された商標)」の頭文字の「R」をとったもので、「®」マークが付された商標が商標登録されていることを示します。
とはいえ、登録商標に「®」マークを付すことは義務ではありませんので、登録商標であっても「®」マークが付されていないものも多いと思います。
登録されていない商標に「®」マークを付すことは虚偽表示
一方、登録されていない商標に「®」マークを付すことは、虚偽表示に該当し(商標法74条)、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金となります(商標法80条)。
「®」マークを付す意義
上記のとおり、登録商標に「®」マークを付すかどうかの選択は自由ではありますが、「®」マークを付すことについては次のような意義あります。
- その商標が登録されていることをアピールする(「模倣すると商標権侵害になるぞ」という他者に対するけん制となる)。
- 商標として使用していることを明確にすることにより、普通名称化を防止する。
※「普通名称化」とは・・・ 当初は商標として識別力(だれの商品・サービスなのかを識別する目印としての力)を有するものであっても、多数の者に使用されることによって識別力が弱まり、商品の出所を示す商標としてではなく一定の商品を示す普通名称として認識されるようになること。 |
「TM」「SM」マーク
商標に付されるマークには、「®」のほかに、「TM」、「SM」があります。
「TM」、「SM」は、商標登録されているか否かにかかわらず、商標に付すことができます。
「TM」マーク
「Trade Mark(商標)」の「T」、「M」をとったものです。
「TM」マークは、サービス商標に使用される「SM」に対して、商品商標に使用されるものとしての意味合いもありますが、サービス商標を含む商標全般に使用されています。
「SM」マーク
「Service Mark(サービス商標)」の「S」、「M」をとったものです。
サービス商標は、レストラン、タクシーの車両輸送などのサービスに使用する商標であり、「SM」マークはサービス商標に使用されます。
「TM」「SM」マークを付す意義
「TM」、「SM」も、「®」と同様にそれらを商標に付すかどうかは任意ですが、それらのマークを付すことについては、下記の意義が考えられます。
- 商標として使用していることをアピールする。
- 商標として使用していることを明確にすることにより、普通名称化を防止する。
普通名称化
先程から「®」などのマークを付す意義として、「普通名称化を防止する」ことを挙げていますが、普通名称化を防止できないとどうなるのでしょうか?
普通名称化とは
「普通名称化」とは・・・ 当初は商標として識別力(だれの商品・サービスなのかを識別する目印としての力)を有するものであっても、多数の者に使用されることによって識別力が弱まり、商品の出所を示す商標としてではなく一定の商品を示す普通名称として認識されるようになること。 |
「普通名称化」とは、識別力があった商標が普通名称になってしまうこと、すなわち、商標権で独占できていた商標がだれでも使用できる名称になってしまうことです。
普通名称化したものとして、「セロテープ」、「うどんすき」などがあります。
普通名称化すると
普通名称化してしまうと、せっかく商標登録した商標が自分の商品・サービスを示すものとして認識されなくなり、だれもが使える名称となり、独占できなくなってしまいます。
普通名称化の要因は、登録商標として独占できる状況であるにもかかわらず、他人の使用を放置してしまうことにあります。
そのため、普通名称化を防ぐためには、他人の使用を放置せず、無断使用に対しては注意や警告などを行い使用を止めさせるなどの対応が必要です。
また、登録商標に「®」「TM」などのマークを付して、「これは商品・サービスの目印ですよ、普通名称ではないですよ」ということを示すことが重要です。
不使用取消審判による取消
普通名称化のほかにも、せっかくの商標登録の意味がなくなってしまう事態が考えられます。
それは不使用取消審判による取消しです。
不使用取消審判は、一定期間使用していない他人の商標登録の取消を請求する手続です。
不使用取消審判請求の日から過去3年間、日本国内でその登録商標が使用されていないと、その商標登録は取り消されます。
不使用取消審判で問題となるのが、下記のように異なる商標の態様や分野で使用しているケースです。このようなケースでは、登録商標を使用しているつもりでも、登録商標の使用ではないと判断されて、商標登録が取り消されてしまう可能性があります。
- 登録商標と使用している商標が異なる(図形の有無や表記)。
- 登録している指定商品・指定役務と使用している商品・役務が異なる。
実際のところ、不使用取消審判は、商標登録の障害となる類似商標が登録されているときに、その障害を取り除くためによく用いられる手段です。
不本意な取消を避けるために、どこかで登録商標をそのままの態様で継続して使用しておくなどの対策が必要です。
商品・役務のズレ
時が経つにつれてビジネスの状況は変わります。
当初「チーズ」だけだったが「アイスクリーム」も販売するようになった・・・
ラーメン店がコンビニエンスストアとのコラボでカップ麺を販売することになった・・・など。
ビジネスの変化に応じて、商標登録の内容を見直す必要があります。
将来の分野の拡大は想定されていたが、商標登録出願の段階では予算の関係で登録する商品・サービスを限定せざるを得なかったり、そもそも当初から分野の拡大や変更を想定していなかったりすることもあります。
他人が類似商標を使用しているので、商標権を行使しようと思ったら、実はその分野で商標登録していなかった・・・。そんなことがないよう、商品アイテムが増えたり、新たな分野に参入するときには商標登録を見直すことが重要です。
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