今年もあと半月、来年の大河ドラマが気になる時期になりましたね?
大河ドラマのタイトル
2023年の大河ドラマは、室町時代後期から江戸時代を舞台に徳川家康を描く「どうする家康」。
実は大河ドラマのタイトルは商標登録されているんです。
大河ドラマのタイトルの商標登録例 |
2023年大河ドラマ 商標「どうする家康」(商標登録第6406693号) 権利者:株式会社NHKエンタープライズ 指定商品・指定役務: 第29類:菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実ほか 第30類:茶,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)ほか 第33類:清酒,焼酎ほか 第39類:企画旅行の実施,旅行者の案内ほか ※上記のほか多数の区分で登録 |
2022年大河ドラマ 商標「鎌倉殿の13人」(商標登録第6282948号) 権利者:株式会社NHKエンタープライズ 指定商品・指定役務: 第29類:菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実ほか 第30類:茶,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)ほか 第33類:清酒,焼酎ほか 第39類:企画旅行の実施,旅行者の案内ほか ※上記のほか多数の区分で登録 |
2024年大河ドラマ 商標「光る君へ」(商願2022-50435 ※現在審査中) 出願人:株式会社NHKエンタープライズ 指定商品・指定役務: 第29類:菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものに限る。),肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実ほか 第30類:茶,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)ほか 第33類:清酒,焼酎ほか 第39類:企画旅行の実施,旅行者の案内ほか ※上記のほか多数の区分で出願中 |
規制されていなかった歴史上の人物名の商標登録
「どうする家康」には、「家康」という歴史上の人物名が入っていますので、歴史上の人物名は商標登録できることがわかります。
というより、実は、現行の商標法においては、歴史上の人物名の商標登録を規制する明文の規定は存在しないんです。
そのため、「家康」をはじめ、「織田信長」「武田信玄」などの歴史上の人物名がお菓子やお酒の商標として登録されている例が多数あります。
しかし、近年、地方公共団体等が、歴史上の人物の業績を称える記念館を運営していたり、地域興しや観光振興のために歴史上の人物名を商標として使用したりするような実情が増え、歴史上の人物名を一私人や企業が商標登録して独占することの弊害が顕在化してきました。
新設された歴史上の人物名の取り扱い
そこで、特許庁は、2009年に「歴史上の人物名(周知・著名な故人の人物名)からなる商標登録出願の取扱いについて」を新設し、公益を損なうような歴史上の人物名に関する商標登録出願は公序良俗に反するものとして拒絶することを明確に示しました。
つまり、歴史上の人物名に関する商標は厳しく審査されることになったのです。
商標審査便覧 ・歴史上の人物名(周知・著名な故人の人物名)からなる商標登録出願の取扱いについて 42_107_04.pdf (jpo.go.jp) |
歴史上の人物名
ここでいう「歴史上の人物」とは周知・著名な実在した故人をいい、外国人も含まれます。
また、「人物名」には、フルネーム(正式な氏名)だけでなく、略称・異名・芸名等も含まれます。例えば、「家康」、「信長」、「信玄」、「竜馬」などです。
ただし、略称・異名・芸名の場合は特定の人物を表すものとして広く認識されているものに限られます。
なお、「歴史上の人物」には現存する人は含まれません。現存する人の名前に関する商標については別途明文の規定がありそちらで規制されます。
考慮される事情
歴史上の人物名を含む商標の出願が公序良俗に反するかどうかは下記の事情を考慮して判断されます。
(1)当該歴史上の人物の周知・著名性
(2)当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識
(3)当該歴史上の人物名の利用状況
(4)当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品・役務との関係
(5)出願の経緯・目的・理由
(6)当該歴史上の人物と出願人との関係
例えば、(3)当該歴史上の人物名の利用状況に関しては、地方公共団体や商工会議所等がその歴史上の人物に関連する祭りやイベントを開催したり、博物館などを運営したりしているか、などが考慮されます。
また、(4)当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品・役務との関係に関しては、その出願において指定している指定商品・指定役務が、その歴史上の人物のゆかりのある地域の土産物や特産品や観光に関連するものかどうか、などが考慮されます。
さらに、(6)当該歴史上の人物と出願人との関係に関しては、出願人がその歴史上の人物の子孫であるか、財産を管理する団体であるか、ゆかりのある地域の地方公共団体であるか、などが考慮されます。
すなわち、例えば、毎年「徳川家康まつり」という祭りが家康ゆかりの地で開催されている状況である場合((3))、土産物としてよくある商品「菓子」((4))について商標「徳川家康」を、家康と関連のない個人や企業((6))が出願すると、公益を損なうおそれがあるという理由で拒絶される可能性が高い、ということになります。
現在の登録の状況
とはいえ、登録が認められない訳ではありません。
岡崎市や浜松市などの地方公共団体以外の企業が出願人の場合でも、「家康」を含む商標について商標登録が認められています。
「家康」を含む商標の登録例 |
商標「家康の秘宝」(商標登録第6249311号) 権利者:株式会社栄進商事 指定商品・指定役務: 第5類:サプリメント,栄養補助食品,薬剤 |
商標「家康くんレンタカー」(商標登録第6422280号) 権利者:株式会社大栄自動車 指定商品・指定役務: 第39類:車両による輸送,自動車による輸送,道路情報の提供,自動車の運転の代行ほか |
商標「徳川家康疫病退散マスク」(商標登録第6592638号) 権利者:株式会社ユニティ 指定商品・指定役務: 第10類:再利用可能なガーゼ製衛生マスク,医療従事者用マスク,医療用保護マスク,治療用の使い捨ての蒸気加熱式マスク,治療用フェイシャルマスク,治療用発光ダイオード(LED)マスク,衛生マスクほか |
そうはいっても、実際に歴史上の人物名を含む商標を出願した際に、公益に反するという拒絶理由通知を受領したことがあり、実際に審査が厳しくなったことを実感しています。
その際は、子孫の方が出願人だったので、その事情を説明する証拠を提出して登録に至りましたが、関係者の出願であっても何らかの対応が必要になることもありますので、歴史上の人物名を含む商標を出願する際には注意が必要です。
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