本のタイトルの保護と商標登録

先日、今年の芥川賞・直木賞の発表がありました。

最近は、Kindle出版など、個人でも本を出版しやすい環境にありますが、気になるのが本のタイトルです。一生懸命考えた本のタイトルをマネされたくない、似たようなタイトルが多いけど大丈夫なの？などなど、本のタイトルに関する疑問は多いもの。

そこで、今回は本のタイトルの保護について考えてみたいと思います。

同じタイトルでも書籍と雑誌とでは状況が異なる！

書籍と定期刊行物（雑誌、新聞など）では、タイトルの保護の状況が異なりますので分けて説明します。

まずは書籍のタイトルから。

残念ながら、書籍のタイトルを守るのは難しいです。

それは、著作権でも商標権でも保護できないからです。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ほとんどの書籍のタイトルは著作物ではないことが多く、著作権で保護することはできません。

なぜなら、書籍のタイトルは、短く簡潔な言葉が使用されることが多く、著作物として保護されるオリジナルの表現とはいえないためです。

したがって、書籍の本文は著作物として著作権で保護されますが、書籍のタイトルは著作権で保護されないのです。

ですので、書籍のタイトルだけがマネされても著作権侵害を理由にやめさせることはできません。

ただし、タイトルが長い場合（俳句より長い場合）は著作物として保護される余地があります。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

書籍のタイトルが著作権で守られないなら「商標権で！」との期待もありますが、実は商標権で保護することも難しいんです。

なぜなら、書籍のタイトルは、書籍の内容を示すものであって、商標権で保護される商品としての「書籍」の目印ではないためです。

ちなみに、商品としての「書籍」の目印（商標）は、出版社名（小学館、集英社）などが該当します。

〈商標審査基準より〉

特許庁　第1　第3条第1項（商標登録の要件）
五　第3条第1項第3号（商品の産地、販売地、品質その他の特徴等の表示又は役務の提供の場所、質その他の特徴等の表示）（PDF：270KB）　

(ｱ) ｢書籍｣、｢電子出版物｣、映像が記録された｢フィルム｣、｢録音済みの磁気テープ｣､｢録音済みのコンパクトディスク｣、｢レコード｣等の商品について、商標が、著作物の分類・種別等の一定の内容を明らかに認識させるものと認められる場合には、商品の｢品質｣を表示するものと判断する。

ところで、商標登録の審査基準には、「商標が、著作物の一定の内容を明らかに認識させるものと認められる場合」には、商標の品質に該当するため商標登録できない、と書かれています。

ということは、「商標が、著作物の一定の内容を明らかに認識させるものと認められる場合」ではないときは、書籍のタイトルでも商標登録できることになります。

ですので、書籍のタイトルであっても、商品「書籍」について商標権を取得できることがあります。

とはいえ、「書籍」でタイトルを商標登録できたとしても、商標権侵害を理由にタイトルのマネをやめさせるのは難しいんです。

下記のとおり、商品「書籍」についての商標権に基づいて訴えた事例では、商標権侵害ではないと判断され、似ているタイトルの使用をやめさせることはできませんでした。

〈商標権侵害ではないと判断された例〉

・書籍「朝バナナ ダイエット成功のコツ40」の販売行為は、「朝バナナ」（商品「書籍」）の商標権を侵害していない。
・解説書「POS実践マニュアル」の販売行為は、「ＰＯＳ」（商品「印刷物」）の商標権を侵害していない。