世界的に和食ブームですが、先日、和食の一般的な名前を海外で商標登録できるのか?というお問い合わせがありました。
実際の例とは違いますが、アメリカで「ONIGIRI(おにぎり)」を商標登録できるのか?といった感じです。
商品「おにぎり」以外なら「ONIGIRI」は商標登録できる!
その答えは?
→ 「できる場合」と「できない場合」がある、です。
商標登録できない場合
「ONIGIRI」は、商品「おにぎり」やサービス「おにぎりの提供」の分野では商標登録できません。
商標登録できる場合
一方、商品「おにぎり」やサービス「おにぎりの提供」以外の分野であれば商標登録できます。
実際には次のような登録例があります。
商標 | 分野(商品・サービス) |
「ONIGIRI」(登録4762491号) | 第30類 菓子及びパン |
「ONIGIRI」(登録5722140号) | 第14類 身飾品、時計ほか 第18類 かばん類、袋物ほか 第25類 被服ほか |
商品・サービス分野との関係で決まる!
商標登録は、「商標」と「分野(その商標を使う商品・サービス)」がセットになったものです。
一般的な言葉が商標登録できるかどうかは、その言葉と商標登録しようとする「分野」との関係で決まります。
✕その言葉が商品・サービスの説明に該当する場合
商標法では、商品の産地、販売地、品質などの特徴の表示だけからなる商標は、商標登録できないと規定されています。
商標法第3条第1項第3号 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標 07_3-1-3.pdf (jpo.go.jp) |
「ONIGIRI」は、商品「おにぎり」との関係では、「おにぎり(ご飯を三角、俵、円柱形などに成形した食べ物)」の説明にすぎないので、商標登録できないというわけです。
確かに、「おにぎり」のパッケージに「ONIGIRI」と書いてあっても、それは外国人向けの商品の説明だと認識するだけで、特定の会社や個人を示す目印だとは思いません。
また、仮にもし商品「おにぎり」分野において「ONIGIRI」が商標登録されてしまうと、商標権者以外の企業や個人が「おにぎり」の販売において「ONIGIRI」を使うことができません。また、「ONIGIRI」の商標権は「おにぎり」や「オニギリ」を使う場合にまで及ぶ可能性があり、他の企業や個人が「おにぎり」を販売する際に「おにぎり」、「オニギリ」を使えないという事態になってしまいます。
このように、商品やサービスの説明の該当する言葉については、次の2つの点から商標登録できないことになっています。
1.だれの商品・サービスなのかわからない
2.一企業や一個人にその使用を独占させると弊害が生じる
〇その言葉が商品・サービスの説明に該当しない場合
一方、一般的な言葉でも、商品・サービスの説明に該当しなければ商標登録できます。
「ONIGIRI」は、商品「トートバッグ」との関係では、例えば、デパートのかばん売り場で販売されているトートバッグに「ONIGIRI」のタグがついている場合、「ONIGIRI」はトートバッグという商品の説明ではなく、「ONIGIRI」というブランド名であると認識されます。
また、「ONIGIRI」が商品「トートバッグ」分野で商標登録されても、他の企業や個人は別の商標を選択、使用できるので、特に弊害は生じません。
身近にある例でいうと、「APPLE」は、商品「りんご」や「りんごジュース」との関係では商品の説明に該当しますが、商品「パソコン」や「スマートフォン」との関係では、商品の説明ではないので、これらの分野では商標登録できるのです。
「さくら」、「富士山」の場合を見てみよう!
日本を代表する言葉、「さくら(桜)」と「富士山」の場合をみてみましょう。
どちらも日本人に愛されている言葉なので、登録された例、拒絶された例はたくさんあるのですが、今回はその一部をご紹介します。
「さくら(桜)」
〇 登録された例
商標 | 分野(商品・サービス) |
「さくら」(登録542443号) | 第16類 文房具類ほか |
「さくら」(登録4008890号) | 第36類 預金の受入れほか |
✕ 登録されなかった(拒絶された)例
商標 | 分野(商品・サービス) |
「桜」 | 第32類 ビールほか、第33類 洋酒,果実酒,酎ハイほか |
「富士山」
〇 登録された例
商標 | 分野(商品・サービス) |
「富士山」(登録5329822号) | 第 9類 電気通信機械器具ほか |
「富士山」(登録5338235号) | 第25類 被服ほか |
✕ 登録されなかった(拒絶された)例
商標 | 分野(商品・サービス) |
富士山バウム | 第30類「バウムクーヘン」 |
海外でも状況は同じ!
日本の登録例などをご紹介しましたが、海外でも同様に、一般的な言葉が商標登録できるかどうかは、商標登録する分野との関係で決まります。
でも、ここで一つ疑問が生じると思います。
日本では商品の説明に該当するとしても、海外では商品・サービスの説明として認識されないから登録されるのでは?という疑問です。
この点、アメリカでは、商標登録の申請時に商標の翻訳が要求され、申請書類に商標の意味を記載します。また、商標の翻訳が要求されれない国でも、審査官が商標中に使用されている言葉の意味をインターネット等で調べます。
そのため、日本語であっても、その言葉が商品の説明であるかどうかが確認されたうえで審査がなされますので、日本語だから登録される、ということはほぼないと考えたほうがよいと思います。
※複数国に一括して商標の保護を求める手続を行うことができる国際登録制度で使用する願書には、商標の翻訳を記載する欄があります。
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