-ブランドの未来を守るために今考えること-

はじめに
「商標登録って、どの“区分”にするかが大事なんですよね?」
起業準備中の方から、よくいただくご質問です。
確かに「区分」は商標制度の中で欠かせない概念です。
でも、実はもっと大切なものがあります。
それが、「指定商品・指定役務(えきむ)」です。
※「指定役務」の「役務(えきむ)」は「サービス」を意味する言葉です。
今回は、この「指定商品・指定役務」が商標登録においてどれほど重要か、
そしてあなたのブランドの未来を守るために何を考えるべきかを、わかりやすくお伝えします。
商標登録は「商標」と「指定商品・指定役務」のセット
商標登録では、「名前」や「ロゴ」などの“商標”だけを登録するわけではありません。
「この商標を、どんな商品やサービスに使うのか」までを含めて出願することで、はじめて商標権が成立します。
この「どんな商品やサービスに使うか」を明確にするのが、「指定商品・指定役務」です。
たとえば、「つじのか」という名前を商標として登録したいとします。
このとき、「何に使うのか」が明確でなければ、その名前だけでは商標権として保護されません。
- アクセサリーに使いたい → 「ネックレス、ブレスレット」(商品)など
- ネイルサロンの屋号に使いたい → 「美容」(サービス)など
- オンライン講座に使いたい → 「ビジネススキルの教育、知的財産に関する講義」(サービス)など
このように、商標と、その商標を使う商品やサービス(指定商品・指定役務)のセットで商標登録が成立することが、最も重要なポイントなのです。
「区分」はあくまで“整理のための分類”。大切なのは中身
商標登録の手続においてよく登場するのが「第○○類」といった“区分”ですが、これは商品やサービスを分野ごとに整理するための分類で、あくまで便宜的なものです。分類の目安であり、制度の運用上の「地図」のような役割を果たしています。
しかし、商標登録においては、この「区分」が費用面にも大きく関わってくる点に注意が必要です。
商標の出願料や登録料は、選択した区分の数に応じて加算される仕組みになっています。
たとえば:
- 出願費用:3,400円+(8,600円✕区分数)
- 登録費用(10年分):区分数✕32,900円
↓ 特許庁に支払う印紙代の情報です。
一方、「指定商品・指定役務(えきむ)」は、実際に商標を使いたい商品やサービスを個別に挙げるものです。
区分が「地図」なら、指定商品・役務は「住所」のようなもの。守りたい範囲を正確に表すための大切な中身です。
そしてこの「指定商品・指定役務」は、一度登録されると原則として後から変更・追加ができません。
つまり、「どの区分にするか」というより、「どの商品やサービスを指定商品・指定役務とするのか」を慎重に検討する必要があります。
↓ 手続や費用など、商標登録出願の前に知っておきたい事項がまとめられています。
初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁
指定商品・指定役務の選び方で、ブランド展開の幅が変わる!
事業を始めると、「最初はネットショップだけのつもりだったけれど、講座やイベントもやってみたくなった」「今後、オリジナル商品も開発していきたい」など、自然と展開が広がっていくことがよくあります。
ですが、商標登録した指定商品・指定役務に記載していなかった分野については、他人が同じ商標を登録してしまう可能性があるのです。
たとえば、こんな展開の広がりに注意!
| 使いたい名前の用途 | 想定される商品・役務 | 追加で考慮すべき商品・役務 |
| お菓子を売る店の名前 | 「クッキー,チョコレート菓子」(第30類)など | 「飲食物の提供」(第43類) 「菓子作りの教授」(第41類)など |
| ハンドメイド雑貨の店名 | 「革製ポーチ」(第18類) 「身飾品」(第14類)など | 「身飾品の小売又は卸売の業務において行なわれる顧客に対する便益の提供」(第35類) 「ワークショップの企画・運営又は開催」(第41類)など |
| サロンの屋号 | 「爪の美容,マッサージ」(第44類)など | 「つけ爪,マッサージ用オイル」(第3類)など |
このように、将来の展開をあらかじめ見越した指定商品・指定役務の記載が、商標登録で守ることができる範囲を大きく左右します。
商標登録の前に考えておきたいこと
商標登録を考えるとき、まず大切なのは、今の事業内容を丁寧に言葉にしてみることです。
そしてもうひとつ、「将来的にやりたいこと」まで視野に入れておくと、権利範囲が広がり、あとで困らずにすみます。
特に大事なのは、次のような視点です:
- 自分のサービスや商品は、これからどう広がる可能性があるか?
- 今はまだ構想段階でも、将来的に展開したい内容があるか?
- 似たようなサービスを他人が始めたとき、そのサービスをフォローできるか?
- その分野で他人に商標登録されると、どれくらい困るか?
こうした視点をもとに、商標登録すべき指定商品・指定役務の“優先順位”を整理しておくことが大切です。
商標登録には費用がかかるため、すべてを一度にカバーするのが難しいこともあります。
そういった場合には、
- 今、確実に必要なもの
- 近い将来、始める可能性が高いもの
- 取られると特に困るもの
…などを基準にしながら、予算と照らし合わせて一緒に検討していくことが可能です。
まとめ
商標登録は「商標」と「指定商品・指定役務」のセット。
区分は商品や役務の整理のための分類。変更されることもある。
本当に大切なのは、事業の内容と未来に合った「指定商品・指定役務」の選び方。
将来の展開を考慮して、出願時からしっかりと備えておくことが、ブランドの安心につながります。
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