農家の友9月号に私の書いた記事「商標登録でブランドを大きく育てよう!」が掲載されました。
「農家の友」は、北海道農業を力強くサポートする農業総合月刊誌です。
9月号の特集は「農業女子の活躍応援し隊」です。
機会があればぜひご覧ください!
ところで、記事「商標登録でブランドを大きく育てよう!」では、農産物の6次産業化において商標権を活用していただきたいとの思いで、商標権の概要と役割を解説しています。
そこで、今回は、農産物の6次産業化における商標登録の意義について、事例を交えて考えてみたいと思います。
6次産業化とは・・・
農業者(1次産業)が、農産物の生産だけでなく、加工(2次産業)と流通・販売(3次産業)にも取り組むことで、生産物の価値をさらに高め、農業所得の向上を目指す取り組みです。
「6次産業」の「6」は、1次・2次・3次のそれぞれの数字を掛け算したものであり、産業の融合を図り、新たな価値を生み出すことを意味しています。
1(1次産業:生産)×2(2次産業:加工)×3(3次産業:流通・販売)=6(6次産業) |
6次産業化における商標権の活用事例
それでは、農産物の6次産業化において、商標権がどのように活用されているのでしょうか?
そこで、農林水産省発行の「令和3年 6次産業化 優良事例」で紹介されたもののなかで、登録商標がどのように使用されているのかみてみましょう。
「令和3年 6次産業化 優良事例」事例集のPDFはこちら→yuryo-18.pdf (maff.go.jp)
(1)2次産業(加工品)における登録商標の使用
有限会社小野養豚(山口県萩市)/6次産業化アワード 大臣官房長賞
小野養豚は、自ら立ち上げた「萩むつみ豚」ブランドの登録商標を使用して、自社で生産した豚肉を原材料とする、豚肉、ソーセージ、冷凍豚まんなどの加工品を販売しています。
萩市のブランド豚のお取り寄せ|豚肉・豚まん|萩むつみ豚 (mutsumibuta.net)
(2)2次産業(加工品)と3次産業(販売)における登録商標の使用
株式会社ちば南房総(千葉県南房総市)/6次産業化アワード 協議会奨励賞
ちば南房総は、自社で製造したビワのピューレやジャム、ソフトクリーム、食品メーカーに製造委託したビワのゼリーやカレーなどの加工品に登録商標「枇杷倶楽部」を使用して販売しています。また、同社が運営する道の駅にも登録商標「枇杷倶楽部」を使用しており、加工品だけでなく、販売においても商標権を活用しています。
道の駅とみうら 枇杷倶楽部 -千葉県南房総市- 房州びわを使った製品がいっぱい (biwakurabu.jp)
(3)1次産業(生産)における登録商標の活用
鯖江市伝統野菜等栽培研究会(福井県鯖江市)/地産地消等優良活動表彰(生産部門)農林水産大臣賞
鯖江市伝統野菜等栽培研究会は、絶滅寸前となっていた伝統野菜「吉川ナス」を年間4万個の収穫量まで拡大させ、「吉川ナス」ロゴマークを商標登録するとともに、「吉川ナス」の地理的表示(GI)登録を行い、生鮮の吉川ナスに登録商標「吉川ナス」ロゴマークとGIマークを使用しています。
そして、同研究会は、JA、県、市とともに「吉川ナス倶楽部」を結成し、栽培の技術指導を行うかたわら、地域連携により「吉川ナスバーガー」、「吉川ナスはまなみそ」などの人気商品も誕生させています。
なお、「吉川ナス」については、地域団体商標登録出願中です。
商標権は6次産業化の強い味方!
上記の事例では、登録商標が1次産業、2次産業、3次産業でそれぞれ使用されていました。
6次産業化と一口にいっても、流通や販売の態様はさまざまです。
ですが、確実に言えるのは、生鮮品の出荷(1次産業)だけで完結する場合に比べて、6次産業化では商品の加工、流通など、関わる人が圧倒的に多いということです。
そうなると、万が一、商標に関するトラブルが生じた場合の影響もより大きく、深刻度が増します。
ブランドのネーミングやマークを商標登録することは、自分自身だけでなく、協力してくれる関係者を守ることにつながるのです。商標権を活用することで、みんなが安心して応援できるブランドにすることができ、ビジネスも大きく育っていきますす。
また、商標権は、農産物だけでなく、加工品、レストランや観光農園などのサービスも含めて、包括的かつ長期的にネーミングやマークなどの商標を保護することができるので、6次産業化のブランド戦略において重要な役割を果たします。
商標権は6次産業化の強い味方です。ぜひご活用ください!
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