先日お知らせした商標法の改正に伴い、商標の審査基準も改正されました。
今回はコンセント制度の審査基準の一部をご紹介します。
コンセント制度とは
コンセント制度は、先行商標の商標権者による先行商標と後願商標が併存して商標登録すること(併存登録)の同意があれば登録を認める制度です。
これまでは、ある商標について商標登録出願をしたとき、出願した分野と同一・類似分野において、その商標に類似する先行商標が既に登録されている場合、登録は認められないのが原則でしたが、コンセント制度の導入により、先行商標の商標権者の同意があれば登録が認められるようになります。
ただし、今回の改正で導入されたのは、商標権者の同意があったとしても、混同のおそれがあると判断される場合には登録できない、「留保型」のコンセント制度です。
そこで、気になる「出所混同のおそれ」に関する審査基準をみてみましょう。
「混同を生ずるおそれ」とは
コンセント制度における「混同のおそれ」は、商品やサービスの出所の混同が生じるか、という狭義の混同だけでなく、経済的又は組織的に何等かの関係があるか、という広義の混同も含まれます。
また、査定時の現在のみならず、将来にわたっても混同を生ずるおそれがないことが問題となります。
「混同を生ずるおそれがない」ことの判断方法
「混同を生ずるおそれがない」の判断については、審査基準には、例えば、下記の①から⑧のような、両商標に関する具体的な事情を総合的に考慮して判断されると記載されています。
(3) 考慮事由 ① 両商標の類似性の程度 ② 商標の周知度 ③ 商標が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか ④ 商標がハウスマークであるか ⑤ 企業における多角経営の可能性 ⑥ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性 ⑦ 商品等の需要者の共通性 ⑧ 商標の使用態様その他取引の実情 |
そして、審査基準には、上記の事情のうち「⑧ 商標の使用態様その他取引の実情」として、次のような事項が考えられると記載されています。
⑧ 商標の使用態様その他取引の実情 |
a. 使用する商標の構成 (例)結合商標の構成要素である図形と文字を常に同じ位置関係で使用していること 常に特定の色や書体を使用していること |
b. 商標の使用方法 (例)商品の包装の特定の位置にのみ使用していること 常に社名・社章等の他の標章を併用していること 常に打消し表示(特定の他者の業務に係る商品等であることを否定する表示)を付加していること |
c. 使用する商品等 (例)一方は引用商標を指定商品「コンピュータプログラム」の中で商品「ゲーム用コンピュータプログラム」にのみ使用し、他方は出願商標を商品「医療用コンピュータプログラム」にのみ使用していること 一方は一定金額以上の高価格帯の商品にのみ使用し、他方は一定金額以下の低価格帯の商品にのみ使用していること |
d. 販売・提供方法 (例)一方は小売店等で不特定多数に販売し、他方は個別営業による受注生産のみを行っていること |
e. 販売・提供の時季 (例)一方は春季のみ販売し、他方は秋季のみ販売していること |
f. 販売・提供地域 (例)一方は北海道の店舗でのみ販売し、他方は沖縄県の店舗でのみ販売していること |
g. 混同を防止するために当事者間でとることとされた措置 (例)両商標に混同を生ずるおそれを認めたときは、相手方にその旨を通知し、協議の上、混同の防止又は解消のための措置をとること |
将来の混同を生ずるおそれを否定する方向に考慮できる事情
混同のおそれについては、現在だけでなく、将来にわたっても否定しなければならないところ、将来の混同のおそれを否定する方向に考慮することができる事情として、審査基準には下記のような例が記載されています。
① 将来にわたって変更しないことが合意されている場合 出願人から、両商標に関する具体的な事情を将来にわたって変更しない旨の当事者間における合意(例えば、常に社名を併用すること等、上記⑶⑧a.からg.に掲げるような具体的な事情を変更しない旨の合意)又はその要約が記載された書類が提出された場合。 ② 将来にわたって変動しないことが証拠から認められる場合 上記の合意に基づく場合のほか、両商標に関する具体的な事情が、提出された証拠等により、将来にわたって変動しないと認められる合理的な理由がある場合。 |
「混同を生ずるおそれがない」ことを否定するためには、将来を考慮した承諾書や同意書等の提出が必要になります。
今後のコンセント制度の運用が注目されますね。
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