4月からの他人の氏名(フルネーム)を含む商標の商標登録に関する改正に伴い、商標の審査基準に続き、審査便覧も改訂されました。
商標審査便覧の改訂のお知らせ |
42.108.02「商標法第4条第1項第8号における「商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名」の審査に関する具体的な取扱い」(PDF:134KB) 42.108.03「商標法第4条第1項第8号における「政令で定める要件」の審査に関する具体的な取扱い」(PDF:132KB) |
フルネームを含む商標の商標登録
氏名(フルネーム)を含む商標については、これまで複数の同姓同名の他人がいる場合、全員の承諾がなければ登録は認められませんでしたが、改正後は一定の知名度のある同姓同名の他人の承諾のみで登録が認められるようになります。
もし同姓同名の他人が複数存在したとしても、一定の知名度のある同姓同名がいない場合は承諾は不要となります。
改正された商標法4条1項8号 |
他人の肖像若しくは他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であつて、政令で定める要件に該当しないもの |
「商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名」の例
改訂された審査便覧には、「商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名」として、下記の例が挙げられています。
「商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名」に該当すると考えられる例 |
(例1) ファッションデザイナー商標太郎氏について、同氏がデザイナーを務めるアパレルブランド「商標太郎」は全国の主要都市に路面店を有し、複数の百貨店においてもテナント出店して「被服」を販売売していることが認められるほか、同氏の新作は、海外でのファッションブランドの新作発表会でも発表されたことがある。 ここで、同氏とは全く関係がなく、同氏の承諾を得ていない者が、以下の商標を出願した。 商標「商標太郎」 指定商品「履物,かばん類」 この場合、商標太郎氏は、「被服」の商品との関係において相当程度需要者に知られていると認められる。また、当該商品が、上記指定商品と密接な関係を有する場合、同氏が商品「履物,かばん類」の製造・販売等を行っていないとしても、その商品に氏名が使用された場合に、指定商品の分野における相当程度の需要者が同氏を想起・連想し得るため、上記出願商標は、同号に該当する。 |
(例2) 中華料理人商標次郎氏について、同氏が経営する中華レストラン「商標次郎」が一地方において複数店舗存在しており、「中華料理の提供」の役務を提供していることが認められ、全国紙で複数回取り上げられたりローカルテレビで特集が組まれたりしている。 ここで、同氏とは全く関係がなく、同氏の承諾を得ていない者が、以下の商標を出願した。 商標「商標次郎」 指定商品「チャーハンのもと」 この場合、一地方において、商標次郎氏は、「中華料理の提供」の役務との関係において相当程度需要者に知られていると認められる。また、当該役務が上記指定商品と密接な関係を有する場合、同氏が商品「チャーハンのもと」の製造・販売等を行っていないとしても、その商品に氏名が使用された場合に、指定商品の分野における相当程度の需要者が同氏を想起・連想し得るため、上記出願商標は、同号に該当する。 |
「相当の関連性」があると考えられる例
改正後のフルネームを含む商標の商標登録については、他人の承諾の要件は緩和されますが、出願人側の事情が考慮されるようになり、政令で定める要件に該当する必要があります。
政令で定める要件 |
商標法施行令 第一条 商標法第四条第一項第八号の政令で定める要件は、次の各号のいずれにも該当することとする。 一 商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること。 二 商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと。 |
改訂された審査便覧には、「相当の関連性」について、登録後は氏名が商標として使用されることに鑑み、出願商標に含まれる氏名と出願人自身又は出願人の業務との結びつきの程度を考慮するとして、下記の例が記載されています。
「相当の関連性」があると考えられる例 |
① 商標に含まれる他人の氏名が、出願人の雅号、芸名又は筆名である場合 ② 商標に含まれる他人の氏名について、芸能事務所たる出願人が考案した芸名であって、出願人と業務上の関係がある者が使用している場合 ③ 商標に含まれる他人の氏名について、出願人がその氏名を使用した商品を製造・販売することを内容とするライセンス契約を当該他人と結んでいる場合 ④ 商標に含まれる他人の氏名について、出願人が自己の業務に係る商品又は役務の出所を表示するキャラクター名として使用している事実がある場合 |
なお、商標審査基準には、「相当の関連性」について下記の例が挙げられています。
(1) 「商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること」について |
例えば、出願商標に含まれる他人の氏名が、出願人の自己氏名、創業者や代表者の氏名、出願前から継続的に使用している店名等である場合は、相当の関連性があるのと判断する。 |
改訂された商標審査便覧には、判断の参考となる具体例が盛り込まれましたね。
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