前回のブログで「酒類と農産品の地理的表示(GI)」を取り上げましたが、今回も引き続き地理的表示の話題です。
海外の地理的表示が日本でどのように保護されているのか、チーズの名称を例に見てみましょう。
地理的表示の相互保護
地理的表示(GI:Geographical Indication)とは、その地域ならではの特性を持つ産品の名称のことです。
世界には地理的表示を保護する制度を有する国があり、国家間の約束によって、地理的表示を相互に保護しています。
日本では、日本と同等水準と認められるGI制度を有する外国とGIリストを交換し、その外国のGI産品を保護しています。
日本で保護される地理的表示
相互保護の例として、日本は、日EU経済連携協定(日EU・EPA)に基づいて、EUと互いの地理的表示を保護しあっています。
令和6年3月時点で、日本、EU全体で421件の地理的表示を保護しており、夕張メロン、神戸ビーフ、薩摩などの日本の地理的表示125件がEUで保護されています。
日EU・EPA(概要)(令和6年3月)/外務省 000415752.pdf (mofa.go.jp) |
規制されるチーズの名称の例
日本の地理的表示がEUで保護される一方、日本でもEUの地理的表示が保護されています。
日EU・EPAにおける地理的表示(GI)の取扱いについて/農林水産省 食料産業局 index-17.pdf (maff.go.jp) |
例えば、EUのチーズの地理的表示は日本でも保護されていて、次のような場合は規制の対象となります。
①消費者に真正の地理的表示産品と誤認させるような名称の使用
保護されるEUの地理的表示 | 侵害の例 |
Gouda Holland (ゴーダ ホラント) オランダ チーズ | オランダ産でない非GIゴーダチーズにオランダの国旗等を付け, 消費者に「Gouda Holland(ゴーダ ホラント)」と 誤認させるような表示を行うこと |
②明細書(産地・品質基準・生産方法等を示す文書)に沿わない商品
保護されるEUの地理的表示 | 侵害の例 |
Gorgonzola(ゴルゴンゾーラ) イタリア チーズ | 「○○県産ゴルゴンゾーラ」 ※真正の産地を記載している場合であっても✕ 「ゴルゴンゾーラへのオマージュを込めた国産ブルーチーズ」 ※~種、~タイプ、~スタイル等の表現を伴う場合であっても✕ |
地理的表示の保護が及ばない場合
「パルメザン」
「Parmigiano Reggiano(パルミジャーノ レッジャーノ)」(イタリア チーズ)も日本で保護されるEUの地理的表示ですが、英語翻訳の「パルメザンチーズ」は粉チーズの代名詞として浸透しているため規制の対象から外されており、「パルメザン」や「パルメザンチーズ」は使用できます。
ただし、イタリアの国旗と共に「パルメザンチーズ Authentic Italian」と表示するような、誤認混同を生じるおそれのある表示は規制の対象となります。
「カマンベール」
「カマンベール」についても、「Camembert de Normandie(カマンベール ド ノルマンディ)」(フランス チーズ)は日本で保護されるEUの地理的表示ですが、「カマンベール」は日本では既に一般的な名称となっているため規制の対象外となっており、「カマンベール」も使用可能です。
ただし、こちらも、「ノルマンディ風カマンベール」のような誤認混同を生じるおそれのある表示は規制の対象となります。
また、「モッツァレラ」も日本では一般的な名称と考えられるため、規制の対象外です。
日本で保護されるEUの地理的表示は、上記のチーズ以外のチーズもたくさんありますし、バター、ハムなどの食べ物のほか酒類など多岐にわたりますので、輸入品の表示には注意が必要ですね。
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