― 商品・役務の指定と“区分”のしくみをやさしく解説

はじめに
「商標登録って、名前やロゴを登録するものでしょ?」
そう思っている方も多いのではないでしょうか。
でも実は、商標登録ではその名前やロゴを“どんな商品やサービスに使うか”もあわせて登録します。
しかもこの商品やサービスは、「第1類〜第45類」という分類(区分)で分けられています。
この“区分”が、登録にかかる費用や、商標の権利範囲にまで影響してくるのです。
今回は、最近の区分見直しの話題(たとえば眼鏡の区分が変わるなど)をきっかけに、商標登録でとても大事な「商品・役務の指定」について、わかりやすくご紹介します。
1.商標登録って「名前」だけじゃない?
― 実は必要な“もうひとつの指定”
商標登録というと、「ネーミング」や「ロゴマーク」を保護する制度、と思われがちです。
もちろんそれも正解ですが、実はもうひとつ大事な要素があります。
それが、どんな商品・サービスにその商標を使うのかを指定することです。
たとえば「Tsujinoka」という名前を商標登録したい場合、
「お菓子に使うのか」「洋服に使うのか」「レストランに使うのか」によって、申請内容がまったく違ってきます。
つまり、商標登録=「商標」+「使う商品・サービス」なのです。
2.その商標、どんな商品やサービスに使うの?
― 商品・役務を適切に書く大切さ
商標登録する際の申請書に記載する商品やサービスのことを「指定商品・指定役務」といいます。
「指定商品・指定役務」は商標権の権利範囲を決める重要なもので、基本的には「指定商品・指定役務」として記載されていない商品やサービスは権利範囲に含まれません。
「指定商品・指定役務」がきちんと申請書に書かれていないと、せっかく商標登録しても、本来必要な商品・サービス分野に他人が商標登録してしまったり、マネをする人が出てきたときにきちんと対処できない、ということが起きてしまいます。
また、「指定商品・指定役務」を考える際には、今の事業内容だけでなく、これからの展開も見据えることが重要です。
たとえば…
- 「手作りのお菓子の販売」だけでなく「お菓子を提供するカフェ」も運営する予定
- 「化粧品の販売」だけでなく「その化粧品を使った美容スクール」の開講も視野に入れている
- 「自分で作った雑貨の販売」だけでなく「自分が気に入った雑貨のオンラインショップ」も始めたい
こうした将来の計画に合わせて、必要な商品・役務を検討しましょう。
3.商品・サービスは「区分」に分かれています
― 第1類から第45類まである区分のしくみ
「指定商品・指定役務」は、第1類から第45類までの商品やサービスの「区分」とともに記載します。
第1類から第45類までは次のように分類されています。
- 第1類〜第34類 … 商品(モノ)
- 第35類〜第45類 … 役務(サービス)
たとえば…
- チョコレート … 第30類
- 化粧品 … 第3類
- 洋服 … 第25類
- レストラン … 第43類
「区分」は商品・サービスの枠組みですが、出願や登録の費用を決める要素となっています。
商標登録の際に必要となる特許庁の印紙代は次のようになっていて、区分が増えると費用も増えます。
・出願費用:3,400円+(8,600円✕区分数)
・登録費用(10年分):区分数✕32,900円
また、区分については、同じ商品でも素材や用途が違うと区分が異なることがあるので注意が必要です。
たとえば…
・第29類:菓子(動物性食品又は野菜その他の食用園芸作物を主原料とするものに限る。)
・第30類:菓子(動物性食品又は野菜その他の食用園芸作物を主原料とするものを除く。)
4.見落とし・モレを防ぐには?
― 「商品・役務名検索」を使ってみよう!
自分の使いたい商品やサービスがどの区分に入るの? 関連する区分をモレなく調べたい!
そんなときにおすすめなのが「J-PlatPat」の商品・役務名検索ページです。
キーワードを入力することで、その商品やサービスがどの区分に該当するかがわかります。
たとえば…
「スムージー」と入力すれば、次のような商品・サービスが検索結果が表示されます。
・第29類:スムージー入りの乳飲料
・第30類:スムージーを加味してなるコーヒー及びココア
・第32類:スムージー(果実を主成分とする果実飲料)
・第43類:フローズンヨーグルト又はスムージーを主とする飲食物の提供
また、検索結果は、商標登録の申請書類に「指定商品・指定役務」を記載する際の参考になります。
5.最近の話題:「眼鏡は10類へ」ってどういうこと?
― 区分の見直しで気づくこと
2025年9月、特許庁が公開した商品・サービスの分類に関する類似商品・役務審査基準(案)では、
「これまで第9類だった『眼鏡』を第10類に変更する」などの改訂案が示されました。
「類似商品・役務審査基準〔国際分類第13-2026版対応〕(案)」に対する意見募集について | 経済産業省 特許庁
実はこうした分類の見直しは毎年のように国際的に行われています。
そう考えると、区分はたびたび変更される商品・サービスの「枠組み」にすぎませんが、関連する商品・サービスがどの「区分」に入るのかによって費用が変わりますので、最新の区分の確認が必要です。
6.まとめ:商標登録は、“何に使うのか”をじっくり考えることから
商標登録は、ネーミングやロゴを守るための制度。
でもその守りを強くするためには、「指定商品・指定役務」をしっかり考えて記載することが重要です。
適切な「指定商品・指定役務」を記載することが、あなたのビジネスを守ることにつながります。
- 「指定商品・指定役務」の記載が肝心
- 区分の知識も大切
- モレ防止には検索ツールの活用を
- 未来のビジョンも意識して指定する
「私の場合はどうすれば?」と迷ったら、ぜひお気軽にご相談ください。
あなたのビジネスにぴったり合った「指定商品・指定役務」を、一緒に考えさせていただきます。
↓こちらもどうぞ!

