今年のお正月が明けたころ、事務所名を決めたので、善は急げ!ということで商標登録出願しようと思ったのですが、まだオンライン出願の環境を整えていなかったので、書面で出願をしました。
これまで経験してきた商標登録出願はすべてオンラインだったため、書面での手続に不安もありましたが、今のところ特にトラブルもなく進行しています。
特許庁との書面のやりとりを時系列で書いていきますので、自分で商標登録出願してみようと思っているみなさんの参考になれば幸いです。
願書を作成する
まずは特許庁に提出するための「商標登録願」、いわゆる「願書」を作成します。
願書の様式
願書の様式は下記のサイトからダウンロードできます。
また、書き方については「商標登録出願書類の書き方ガイド」が参考になります。
・様式のダウンロード 各種申請書類一覧(紙手続の様式) | 独立行政法人工業所有権情報研修館 (inpit.go.jp) |
・願書の書き方「商標登録出願書類の書き方ガイド」 trademark2022.pdf (inpit.go.jp) |
商標について
今回出願する商標は「つじのか」という事務所名、すなわち事務所のネーミングで、特に書体などは決まっていないので「標準文字」の書式を選択しました。
「標準文字」は、特許庁長官があらかじめ定めた文字書体で、文字のみで構成される商標の場合に選択できます。
標準文字商標とはどのようなものですか? | 独立行政法人工業所有権情報研修館 (inpit.go.jp)
ネーミングを商標とする場合、特定の書体が決まっていないことが多いので、標準文字として出願するケースが多くなっています。
ちなみに、ロゴの場合は【標準文字】の部分は不要です。
なお、【標準文字】の部分は、出願する商標のタイプに合わせて、【立体商標】、【動き商標】、【ホログラム商標】、【色彩のみからなる商標】、【音商標】、【位置商標】のように記載します。
指定商品(指定役務)について
出願商標を使用する「商品・サービス(役務)」を「指定商品(指定役務)」として記載します。
この「指定商品(指定役務)」は商標権の範囲を決める重要な部分です。
実際に商標を使用している商品・サービス(役務)だけでなく、関連するものや将来使用するかもしれないものなども含めて、できるだけ広めに記載するようにしたほうがよいと思います。
また、願書には「指定商品(指定役務)」が属する「区分」も記載します。
「区分」は世の中の商品・サービスを内容によって区分けした分類で、現在は1~45まであり、
「指定商品(指定役務)」がどの区分に属するかは、下記のサイトで調べることができます。
・商品・サービスが属する区分を調べることができるサイト 商品・役務名検索|J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp) |
・各区分に属する商品・サービス(役務)を確認できるサイト 類似商品・役務審査基準 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp) |
商標登録出願人について
出願人は「自然人」か「法人」のどちらかのみで、法人格のないグループや団体は出願人になることはできません。
今回の出願の場合、「つじのか国際商標事務所」に法人格はないので「杉田基子」を出願人としました。
なお、法人格のないグループや団体が使用する商標を出願する場合は、代表者の個人名を出願するのが一般的です。
特許印紙を貼って郵送する
出願日:2022年1月14日 |
願書の作成ができたら、いよいよ願書を特許庁に送ります。
ですが、商標登録出願料(印紙代)の支払いを忘れてはいけません。
書面で願書を提出する場合は、商標登録出願料と同額の特許印紙を出願書類に貼ることによって、出願料を支払います。
特許印紙
特許印紙は、全国各地の集配郵便局「日本郵便株式会社」、「一般社団法人発明推進協会」、「特許庁内」で販売されているとのことです。
郵便局で購入するケースが多いのではないかと思いますが、いわゆる大きな郵便局でないと取り扱いがないので、お近くの郵便局に問い合わせをしたほうがよいと思います。
今回の出願では、札幌中央郵便局で特許印紙を購入しました。
札幌中央郵便局に出願書類と封筒を持参し、商標登録出願料と同額の特許印紙を購入して、その場で出願書類に特許印紙を貼って、書留で特許庁に郵送しました。
なお、特許印紙は出願書類の上部に貼るだけでOKです。割印は不要です。
提出先
郵送する場合は下記の宛先に送ります。
封筒の表面の余白に「商標登録願 在中」と記載します。
〒100-8915 東京都千代田区霞が関3丁目4番3号 特許庁長官 宛 |
なお、特許庁の受付窓口に直接持って行って提出することもできます。
郵送方法
郵送の場合、届かないということも想定されますので、追跡できる郵送方法を選びます。
また、特許印紙を貼りますので保証があったほうが安心です。
特許庁からの推奨されている送付方法は下記の3つですが、それぞれ、追跡のレベル、保証の有無などが異なります。
わたしは、「一般書留(555円)」で送りました。
一般書留 | 手渡しで受取人からサイン・印鑑、送達途中の追跡も可能、保証は10万円まで |
簡易書留 | 手渡しで受取人からサイン・印鑑、引受と配達完了の記録、保証は5万円まで |
特定記録郵便 | 郵便受けに配達、引受とポスト配達の記録、保証はなし |
発信主義
出願書類や提出期限の定められた書類については、郵便局に差し出した日時に書類が特許庁に到達したとみなす「発信主義」が採用されています。
つまり、郵送で願書を提出する場合は、願書を郵便局から送った日が出願日です。
わたしの場合、2022年1月14日に発送したので出願日は「2022年1月14日」になりました。
なお、願書に記載する「提出日」を発送日にしておいてくださいね。
電子化手数料を納付する
電子化手数料に関する書類が届く:2022年1月24日頃(出願から約10日後) 電子化手数料の納付:2022年1月27日 |
願書を発送してから約10日が経った頃、特許庁から電子化手数料に関する書類が届きました。
電子化手数料
「電子化手数料」は提出した書面(紙)の内容を電子化するための手数料です。
電子化手数料: 基本料金1,200円 + 枚数×700円 |
今回の願書は2枚だったので、「2,600円(1,200円+2枚×700円)」でした。
電子化手数料の支払いは、郵便局か金融機関の窓口で行います。振込手数料も別途必要です。
なお、電子化手数料を納付しないと、最終的には出願が却下となってしまいます。
識別番号通知が届く
識別番号通知が届く:2022年1月31日頃(出願から約2週間後) |
出願してから約2週間後に特許庁から「識別番号通知」が届きました。
識別番号
「識別番号」は手続をする者に対し特許庁長官が付与する9桁のアラビア数字からなる番号です。
「識別番号」が付与された後は、住所を省略して「識別番号」と「氏名または名称」だけで手続をすることができます。
なお、「識別番号」は手続ごとではなく1人の手続者に1の番号が付与されますので、もし同じ人が別の出願をする場合には同じ識別番号を使用することができます。
出願(申請)番号通知が届く
識別番号通知が届く:2022年2月1日頃(出願から約2週間後) |
「識別番号通知」が届いてから数日後に「出願(申請)番号通知」が届きました。
出願(申請)番号
「出願(申請)番号」は出願に対して付与される番号(商願2022(年)-000000(6ケタの数字))です。
「出願(申請)番号」は今後の拒絶理由通知への対応や登録料納付などの手続をするときに必要になります。
出願の内容が公開される
出願公開:2022年2月7日(出願から約3週間後) |
出願から約3週間後に出願した内容が公開され、だれでも見られるようになります。
なお、出願が公開されたことについて特許庁から通知は届きません。
公開されたかどうかは下記のサイトから商標や出願番号を使って検索してみるとわかります。
特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp)
拒絶理由通知書が届く
拒絶理由通知書が届く:2022年7月9日(出願から約6ヶ月後) |
出願から約6ヶ月後に審査結果として「拒絶理由通知書」が届きました。
なお、出願から審査結果が届くまでの期間は、「指定商品(指定役務)」の分野や出願した時期によっても変わります。
出願~審査着手までの期間の目安は下記のサイトで確認することができます。
・出願から審査着手までの期間の目安が公表されているサイト 商標審査着手状況(審査未着手案件) | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp) |
拒絶理由通知書
「拒絶理由通知書」は、審査において登録できない理由が発見された場合に送付される審査結果です。
一方、審査において登録できない理由がない場合は「登録査定」が送付されます。
「拒絶理由通知書」には、登録できない理由(拒絶理由)が記載されていますので、その拒絶理由を踏まえて、意見を述べたり(意見書の提出)、指定商品(指定役務)の記載を修正したり(手続補正書の提出)して、拒絶理由の解消を目指します。
「拒絶理由通知書」への応答期限は、通常は「拒絶理由通知書」の右上に記載された「発送日」から「40日以内」となっていますので、応答期限までに意見書や手続補正書の提出を行う必要があります。
応答の結果、拒絶理由を解消することができれば登録が認められます。一方、拒絶理由が解消できなければ、「拒絶査定」となります。
また、「拒絶理由通知書」に対しそのまま何も対応しない場合は、「拒絶査定」が送付されます。
なお、「拒絶査定」に対しては拒絶査定不服審判という不服を申し立ての手続をとることができます。
・拒絶理由通知書への対応の流れなどが記載されたサイト 商標の拒絶理由通知書を受け取った方へ | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp |
意見書・補正書を提出する
意見書・補正書の提出:2022年7月26日 |
今回の拒絶理由通知書に記載された拒絶理由は、願書に記載した指定商品(指定役務)の中に、弁護士法や司法書士法によって義務付けられている国家資格がないと業務を行うことができないものが含まれているというものでした。
そこで、その拒絶理由を解消するために、まずは担当審査官にメールで拒絶理由を解消するための商品・サービスの記載の補正について確認した後、意見書と手続補正書を提出しました。
なお、拒絶理由通知書が届いた頃にはオンライン出願の環境が整っていたので、意見書と手続補正書はオンラインで提出しました。
もし意見書や補正書を書面で提出する場合は、電子化手数料の納付が必要となりますので、願書のときと同じように、特許庁から電子化手数料に関する書類が届いて、電子化手数料を納付するという流れをとることになります。
登録査定が届く
登録査定が届く:2022年8月2日 |
意見書・補正書の提出から約1週間後に「登録査定」が届きました。
なお、今回はオンラインで意見書・補正書を提出したので、登録査定が約1週間で届きましたが、書面で意見書・補正書を提出した場合は、電子化手数料の納付手続が必要なため、登録査定が届くまでにはもう少し時間がかかるかと思います。
登録査定
「登録査定」はその出願に対する登録を認める通知です。
登録査定を受け取ってから30日以内に登録料を支払うことにより商標登録され、商標権を取得することができます。
登録料の支払いについては、オンラインで支払う方法のほかに、納付書に特許印紙を貼って書面で提出する方法もあります。
・登録料の納付方法などが記載されたサイト 商標の登録査定を受け取った方へ | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp) |
なお、登録料を支払わない場合は、出願が却下処分となりその後は権利化することができなくなります。
登録料の納付
登録料の納付:2022年8月4日 |
登録料の納付をオンラインで行いました。
登録料の納付については、納付書に特許印紙を貼って書面で提出する方法もあります。
・登録料の納付方法が記載されたサイト 特許(登録)料の納付方法について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp) |
登録証が届く
登録証が届く:2022年9月2日(登録料の納付から約1カ月後) |
登録料の納付から約1か月後に「登録証」が届きました!
登録日は「2022年8月8日」と記載されていました。
更新期限の管理
登録証が届いたので、商標登録出願の手続はひとまず終了です。
ですが、忘れてはならないのが更新期限の管理です。
今回は10年分の登録料を納付していますので、更新期限は「2022年8月8日」の10年後の「2023年8月8日」です。10年後も登録商標を使用している場合は、「2023年8月8日」までに更新の手続をする必要があります。
そこで、更新期限の方法ですが、自分でカレンダーなどに記載する方法や、別途ソフトやアプリで管理する方法が考えられます。
また、特許庁は、令和2年4月から商標の更新期限切れを予防するために、メールを利用して商標更新期限をお知らせするサービスを開始しましたので、こちらを利用する方法もあります。
なお、こちらは特許の年金納付期限にも対応しています。
まとめ
- 願書に「特許印紙」を貼って出願料を納付する。「特許印紙」の購入は郵便局に問い合わせを。
- 書面で特許庁に書類を提出した場合は「電子化手数料」の納付が必要になる。
- 書類を郵送する場合は、追跡可能な「一般書留」、「簡易書留」、「特定記録郵便」で。
- 審査結果(拒絶理由通知または登録査定)の前に「識別番号通知」、「出願(申請)番号通知」が届く。
- 審査結果(拒絶理由通知または登録査定)に対しては対応期限までに必要な手続きをとる。
- 登録証が届いたら、登録日を確認のうえ更新期限の管理をする。
なお、商標登録手続についてはこちらもどうぞ。