気になる⁈ 商標登録の費用、手続の流れ、期間と必要書類について解説します!
商標登録をお考えですか?
いざ商標登録するぞ!と思ったものの、どんな手続なの? いくらかかるの? どんな書類が必要なの? すぐに登録できるの?などなど、疑問が次々とわいてくるのではないでしょうか。
そこで、ここでは、そんな疑問にお答えすべく、商標登録の費用、手続の流れ、登録までの期間、そして必要書類について説明していきます。
なお、疑問がある場合はこちら※から遠慮なくお問合せください。
商標登録の費用
商標登録でいちばん気になるのが費用だと思います。
ですので、キッパリ「〇〇〇〇〇円ですよ!」とお伝えしたいのですが、実はそうはいかないんです。
というもの、商標登録の費用は商標登録したい商品・サービスの広さによって変わるためです。
また、自分で手続をするのか、弁理士に手続を依頼するのかによっても変わります。
つまり、ケースバイケースなんです。
ということで、費用はケースバイケースということ念頭におきつつ、費用が変わるポイントをおさえながら費用の目安をお伝えしたいと思います。
費用が変わるポイント❶~手続をするのは自分?弁理士?
商標登録の費用は、誰が手続をするのか、すなわち、自分で手続をするのか、弁理士に手続を依頼するのかによって変わります。
次のように、弁理士に手続を依頼する場合は弁理士の手数料がかかりますのでその分費用は高くなります。
自分で手続をする場合 :特許庁に支払う印紙代 弁理士に手続を依頼する場合:特許庁に支払う印紙代+弁理士の手数料 |
費用が変わるポイント❷~商品・サービスの広さ(区分数)
自分で手続をするにせよ、弁理士に依頼するにせよ、必ずかかるのが特許庁に支払う印紙代です。
つまり、特許庁に支払う印紙代は最低限かかる費用です。
そこで、特許庁に支払う印紙代をみてみますと、①「出願するとき」と②「登録するとき」の2回の支払いが必要であり、それぞれの額は「区分数」によって変わります。
なお、印紙代は変更となる場合がありますので、出願するときに特許庁のウェブサイトで最新のものをご確認ください。
産業財産権関係料金一覧 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
①出願するときに支払う印紙代
②登録するときに支払う印紙代
このように費用の額を左右する「区分数」は、商標を使用する商品・サービスが、いくつの商品・サービス分類(区分)に属しているか によって変わります。
・「区分」とは・・・世の中の商品・サービスを内容によって区分けした分類
世の中の商品・サービスは1~45に区分けされており、例えば下記のような感じで分類されています。
区分 | 各類に属する商品・サービスの例 |
第29類 | 乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実 など |
第30類 | 茶,コーヒー,ココア,氷,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものをく。),パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料 など |
第31類 | 野菜,糖料作物,果実,麦芽,あわ,きび,ごま,そば(穀物),とうもろこし(穀物),ひえ,麦,籾米,もろこし など |
第32類 | ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料 など |
第43類 | 宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育,高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。) など |
各類に属する代表的な商品・役務 kubun-daihyo.pdf (jpo.go.jp)
類似商品・役務審査基準〔国際分類第11-2022版対応〕 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
・「区分数」とは・・・商標登録する商品・サービスが属する区分の数
例1.「牛乳」と「チーズ」に使用するネーミングを商標登録する場合 区分数は「1」←「牛乳」と「チーズ」は第29類 |
例2.「牛乳」、「チーズ」と「アイスクリーム」に使用するネーミングを商標登録する場合 区分数は「2」←「牛乳」と「チーズ」は第29類、「アイスクリーム」は第30類 |
例3.「いちご」、「いちごを使った菓子」、「いちごジュース」と「それらの菓子やジュースを提供するカフェ」で使用するロゴを商標登録する場合 区分数は「4」←青果の「いちご」は第31類、「いちごを使った菓子」は第30類、 「いちごジュース」は第32類、「カフェ(飲食物の提供)」は第43類 |
③出願するときの印紙代+登録するときの印紙代
そして、区分数に応じた、出願するときと登録するときの印紙代の合計は次のようになります。
区分数 | 印紙代(出願するとき+登録するとき) |
1 | 44,900円(出願時12,000円+登録時32,900円※10年分) |
2 | 86,400円(出願時20,600円+登録時65,800円※10年分) |
3 | 127,900円(出願時29,200円+登録時98,700円※10年分) |
4 | 169,400円(出願時37,800円+登録時131,600円※10年分) |
以上が特許庁に支払う印紙代です。
もし自分で手続をする場合の費用は、特許庁に支払う印紙代「44,900円(1区分)~」ということになります。
なお、自分で手続する場合、オンラインではなく紙で出願することが多いと思いますが、その場合、出願書類をデータ化するための電子化手数料*がかかります。また、郵送料などもかかりますので、「5万円~」と考えておいたほうがよいのではないかと思います。
* 電子化手数料:特許庁に出願書類などを紙で書類を提出した場合に必要となるデータ化のための費用 基本料金1,200+枚数×700円(例えば、出願書類が2枚のときは2,600円) |
費用が変わるポイント❸~弁理士の費用は事務所によってさまざま
では、弁理士に手続を依頼する場合の費用はどうでしょうか?
実をいうと印紙代よりもこちらのほうが複雑です。
というのも、かつては弁理士の費用は一律でしたが、現在は料金設定は自由になり事務所によって異なるためです。
とはいえ、弁理士費用としては、出願時の手数料、登録時の手数料と成功報酬がかかり、その額は区分数に応じて変わる、というのが一般的です。
しかし、手数料や成功報酬の額は事務所によって異なりますし、手数料が出願時か登録時のどちらかだけだったり、成功報酬がなかったり、費用体系がさまざまですので、まずは見積依頼をされるのがよろしいかと思います。
※見積依頼はこちらからどうぞ!
費用が変わるポイント❹~審査結果
商標登録出願後は、特許庁では出願された商標が登録できない商標に該当しないかどうかを審査します。
審査の結果、問題なくすんなり登録となるケースですと、かかるのは出願時と登録時の費用のみとなります。
一方、審査の結果、例えば、先に登録されている他人の商標に似ていることなどを理由として拒絶されることもあります。その場合、似ていないという反論の意見書を提出したり、他人の商標登録と重なっている商品・サービスを削除する補正書の提出などの対応をとらなければならないこともあり、それらの対応を弁理士に依頼する場合は別途費用がかかります。
また、ご自身で意見書や補正書を紙で提出する場合は電子化手数料がかかります。
商標登録手続の流れ
特許庁に出願する前の事前準備、出願後の流れと登録後の更新手続について説明します。
1.事前準備
商標登録出願の前に、次のような事前準備が必要です。
- 商標登録する商標を決める。
~ネーミングなのか、ロゴなのか、その組み合わせなのか、使用状況や使用予定に合わせて決めます。
出願する商標は、実際に使用している態様、または、使用する可能性の高い態様のものを選びましょう。
というのも、商標登録後3年間、登録した商標を使用していないと、他人から不使用取消審判を請求されて商標登録が取り消されることがあり、その場合、登録した商標を変形したり、一部を省略した態様で使用していると、登録した商標をそのまま使用していないと登録商標の使用ではないとみなされることがあるためです。 - 商品・サービスを決める。
~次の手順で商品・サービスを決めるのがよいと思います。
1.現在商標を使用している商品・サービス、そして、今後使用する予定のある商品・サービスを洗い出します。
2.その商品・サービスが属する区分(第〇類なのか)を確認します。
3.区分数で費用が変わりますので、予算を確認のうえ、出願する商品・サービスとその区分を決めます。 - 登録可能性について調査をする。
~商標登録したい商標が登録できない商標に該当しないかどうかを調べます。
先に登録されている他人の商標に似ているかどうかの調査は商品・サービスの分野ごとに行いますので、調査の前にSTEP2の商品・サービスを決めておいたほうが効率的です。
ですが、予算の関係で断念せざるを得ない商品・サービスも含めて、広めに調査することをおすすめします。
それは、将来的に商標登録したい商品・サービス分野に他人の商標登録があると、ビジネスにも影響するためです。万が一関連する分野に同一・類似の他人の商標登録がある場合は別の商標を検討したほうがよいかもしれません。 - 願書を作成する。
~商標登録出願するための願書を作成します。
願書の記載事項は「商標」、「商品・サービス」、「出願人の情報(名称、住所など」です。
※詳しくは下記の必要書類のところをご覧ください。
なお、早期権利化のために、早期審査制度やファストトラック審査*を利用する場合は、商品・サービスの書き方が問題になることもありますので、あらかじめ条件を確認のうえ商品・サービスを記載することをおすすめします。
(*ファストトラック審査は現在休止中です。)
2.出願後の流れ
特許庁に対し願書を提出(商標登録出願)すると、特許庁では、商標審査官による審査が行われ、審査を通過したもの(登録できない理由がなかったもの)のみが商標登録を受けることができます。
なお、原則として出願日から2、3週間程度経過後、出願内容が一般に公開されます(出願公開)。
審査の結果、登録を認める登録査定となった場合は、その後、一定期間内に登録料を納付すると、商標登録原簿に設定の登録がなされ、商標権が発生します。
一方、登録できない理由があった場合は拒絶理由が通知されます。その場合、拒絶理由にもよりますが、意見書や補正書を提出して拒絶理由を解消するための手続を行うことができます。
意見書や補正書が提出されると、商標審査官が再審査を行い、拒絶理由が解消されていると判断されると登録を認める登録査定となります。他方、拒絶理由が解消されないと判断された場合は拒絶査定となります。
なお、拒絶査定に対しては、拒絶理由を解消する手続として、拒絶査定不服審判を請求することができます。
3.登録後の更新手続
登録料の納付により商標権が発生した後、更新手続をすることにより、商標権をさらに10年間存続させることができます。
更新手続は登録から10年後の満了日の6か月前から満了日までに行います。
なお、更新手続は更新登録に必要な印紙代を支払うだけで、内容に関する審査は行われません。
なお、弁理士に依頼する場合は上記の印紙代のほかに手数料がかかります。
更新するときに支払う印紙代
出願から登録までの期間
出願から登録までの期間もケースバイケースです。
審査待ちの期間が出願した商品・サービス分野や出願の時期によって異なるためです。
また、審査の結果、拒絶理由が通知された場合は応答期間がプラスされます。
ということで、期間についてもケースバイケースであることを念頭におきつつ、期間の目安をお伝えします。
1.すんなり登録査定となる場合
拒絶理由通知がなく、すんなり登録に至るケースですと、商標登録出願をしてから商標権取得までの期間の目安はおよそ「7か月~12か月」(2022年7月時点)です。
期間の内訳は次のとおりです。
- 出願から審査着手までの期間*:5か月~10か月
- 登録査定から登録料の納付までの期間:30日
- 登録料の納付から設定登録(登録証の発行)までの期間:およそ1か月
* 出願から審査着手までの期間が「5か月~10か月」のように幅があるのは、下記の表のように、「科学は5か月~7か月」、「食品は7か月~9か月」のように、出願した商品・サービス分野によって審査着手までの期間が異なるためです。また、出願した時期によっても変わります。
下記の表は令和4年4月時点のものですが、3か月を目安に更新されるようですので、出願後は商標審査着手状況(審査未着手案件) でチェックしてみてください。
2.拒絶理由通知がある場合
もし拒絶理由通知がなされた場合は、すんなり登録されるケースに次の期間、案件によっても変わりますが、一般的にはおよそ「3か月」がプラスされますので、出願から拒絶理由が解消されて登録されるまではおよそ「10か月~15か月」です。
プラス3か月の内訳は次のとおりです。
- 拒絶理由通知の応答期間:40日間
- 商標審査官の再審査の期間:通常2か月
3.審査待ち期間を縮める制度
すんなり登録される場合でも、すくなくとも7か月はかかりますので、もし早く商標登録したいと思っている場合は、審査待ち期間を縮める下記の制度の利用を検討してもよいのではないでしょうか。
ただし、制度の利用には条件がありますので、利用できるかどうかを特許庁や弁理士に問い合わせてみることをおすすめします。
早期審査制度
出願した商標を既に使用している場合に利用できる制度です。
2020年の実績だと、早期審査の申請から審査着手までの期間は平均1.9か月とのことです。
商標早期審査・早期審理の概要 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
ファストトラック審査
商品・サービスの記載が特許庁が示す定型的なものである場合に利用できる制度です。
出願から約6か月で最初の審査結果が通知されるとのことです。
ファストトラック審査 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
必要書類
1.提出するのは出願書類(願書)のみ
商標登録出願のときに特許庁に提出するのは「願書」のみです。
住民票や戸籍謄本などの提出は必要ありません。
ただし、「願書」に記載する出願人の「名称(氏名)」と「住所」は、住民票や会社の登記簿の記載にあわせたほうがよいので、の表記を住民票などで確認しておくことをおすすめします。
また、出願人は「自然人」か「法人」のどちらかのみで、法人格のないグループや団体は出願人になることはできません。団体などが使用する商標については、代表者(自然人)を出願人とするのが一般的です。
2.願書の記載事項
願書の記載事項は、「商標」、「分類(区分)と商品・サービス」、「出願人の情報」です。
なお、紙で提出する場合は願書の上部に特許印紙(出願するときの印紙代の額)を貼ります。
まとめ
- 商標登録費用はケースバイケース。特許庁に支払う印紙代のみだと「5万円~」。
- 商標登録手続は、調査を含めて事前準備が必要。出願後は審査があるのでその結果いかんで対応が異なる。
- 出願から登録までの期間は、すんなりいくケースだと「7か月~12か月」。拒絶理由が通知されたケースは一般的に「プラス3か月」。
- 必要書類は「願書」のみ。願書の記載事項は「商標」、「区分と商品・サービス」、「出願人の情報」。